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始まりは午東洞にあった『アグチッム』
慶尚南道馬山(キョンサンナムド・マサン)を代表する食べ物“アグチッム(アンコウを辛く蒸したもの)”。慶尚道の方言・アグ(アンコウ)をそのまま名前に付けた食べ物である。韓国最古の魚類学書“玆山魚譜(チャサンオボ)”では、アグを釣絲魚(チョサオ)、俗名を我口漁(アグオ)と載せている。50年前までも食べることのなかったアグがアグチッムとなって親しまれるようになった理由はなんだろうか?
慶尚南道午東洞(オドンドン)でチャンオクック(ウナギチゲ)を売っていたハルモニ(お婆ちゃん)が、漁夫たちが捕ってきたアグをテンジャン(味噌)とコッチュジャン、ニンニク、長ネギなどといっしょに煮込んでいたという。これは、プッゴチッム(干し明太)の調理方法をそのまま活かしたものだった。ハルモニが味見をしてから「大丈夫!!」と思い、常連客に酒のつまみとして出したのがアグチッムの始まりと言われている。
アグチッムにコンナムル(豆もやし)やミナリ(セリ)などの野菜が入るようになったのは、1960年代半ばからでとされている。その後、ハルモニが他界すると午東洞にアグチッム専門店が次々に開業し、現在では韓国全土で有名な食べ物の一つとなった。
馬山アグチッムは、他の地域のアグチッムとは違う。馬山では、冷たい北風が吹く中で20〜30日間干したアグを冷凍庫へ保管して使用する。馬山アグチッムは、テンジャンの味が良くなければならない。そこへ干したアグにコンナムル、コッチュカル(唐辛子)、馬山名物ミドドック(海藻類の一つ)を混ぜてから蒸すことでアグチッム独特の味がでる。
アグは、他の魚とは違いビタミンAが多く含まれ美容に良く、脂肪がない淡白な味と、食べる時にも生臭さがないのが人気の秘訣である。アグ料理には、コンナムルやミナリなどの野菜が多く使われるほどビタミンCを補給し、現代人の舌にあった味付けになる。 |
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